#12 スマートコネクテッドプロダクトとは

サマリ

想定読者:業界・バズワードに興味がある方 / 想定時間:10分~15分程度
 第12回目のテーマは、前記事のハイプサイクルにも取り上げていた、スマートコネクテッドプロダクトについて取り上げます。


#1 経営学の巨匠マイケル・ポーター

 ”スマートコネクテッドプロダクト”は、ハーバードビジネススクールでの名物教授であるマイケル・ポーターが提唱した概念です。ポーターは経営学の巨匠であり、かなり重要な考え方を打ち出した方なので、この章ではポーターの功績について簡単に取り上げたいと思います。

 ポーターは競争戦略について考察した第一人者であり、企業は市場におけるポジショニングが重要との理念から、数々の手法を展開します。特に有名な手法としては、“ファイブフォース分析”や“バリューチェーン”です。

 検索してみて頂けると、有名故にイメージがすぐ出てくると思います。ファイブフォース分析とは、自社の環境を中心に据え、①自社がいる競争環境 ②買い手からの交渉力 ③売り手からの交渉力 ④新規参入企業の存在 ⑤代替品の存在 の大きく5つに分類し、それぞれを把握し、整理することで自社の戦略を立案せよとのフレームワークになります。
 バリューチェーンとは、自社と競合他社との差別化を図るために、業務の価値源泉はどこにあるか整理する手法です。企業活動を主活動と支援活動に分け、主活動にはそれぞれ①購買物流 ②製造 ③出荷物流 ④販売・マーケティング ⑤サービス が順に存在し、支援活動にはそれぞれ①人事・労務管理 ②技術開発 ③調達 ④インフラ が並列に存在し、全てがかみ合って利益が構成されるといったフレームワークになります。

 これらのツールは現在でも使用されているほど強力であり、どこかで皆さんの役に立つと思いますので、本理論や手法を解説している「競争の戦略」は、おすすめです。(リンク先:https://amzn.asia/d/g4m0t7J

#2 スマートコネクテッドプロダクトとは

 上記のマイケル・ポーターらが、「IoT時代の競争戦略」という論文で提唱した単語が、スマートコネクテッドプロダクトです。そこから約1年程度経過し、2016年12月のPTCでの公演でワードが浸透したようです。

 この論文や公演を元に理解を深めた結果を記載したいと思います。まず、この単語の定義としては、以下になります。

先進性は、モノのインターネットへの接続(筆者注:IoT)ではなくモノの本質が変化している

 これはIoTではなく、スマートコネクテッドプロダクトだと、本書では書かれています。その後、スマートコネクテッドプロダクトが如何に競争環境を変えうる要素かの解説があった後、サービスの変化として、モニタリング→制御→最適化→自律性の4段階で推移するとの説明がありました。簡単に記載すると、以下のようになります。

 2016年に提唱された時代背景から、当然今のChatGPTに代表されるようなAIは、まだまだその実現に疑問を投げかけられていました。その中で、しっかり自律性も掲げているあたりは先見の明があると言えます。

 さらに、これらを元に、企業が直面する新たな戦略的判断として10個掲げています。特に”開放的なシステムと閉鎖的なシステムのどちらを選ぶべきか”や、”製品データの使用権とアクセス権をどう管理するか”といった個別具体的な内容もある中で、ポーターらしい”製品データを第三者に販売して利益を得るタイプの新規事業に乗り出すべきだろうか”などの、競争戦略上の変化にも触れている点は興味深いです。
 詳細は、論文を是非購読してみてください。(リンク先:https://amzn.asia/d/9nVEjT4

#3 IoTの方が市民権を得ている?

 ここまでスマートコネクテッドプロダクトの理解に努めてきたわけですが、肝心な”モノの本質が変化するという心髄”は認識できず、あくまで従来のIoTの定義の内数で私は解釈しています。もともとIoTの定義としては、インターネットへの接続を通じて、様々なサービスを繰り広げるといった、インターネットへの接続よりもサービス提供を主軸とした概念と私は認識しているため、ワードが提唱された2016年の時代背景を考慮しても、IoTの内数だと捉えています。

 むしろ、本書では、デバイスの変化に対する経営課題への提言として読む分には参考になるため、こちらの方が価値があると思います。ここはポーターらしく、この変化がどのような競争戦略に紐づくかを、詳細な粒度から経営層の粒度まで10個の論点を提示されているため、IoTの開発・導入に置いて参考にすべき内容だと捉えています。

 だからでしょうか?、スマートコネクテッドプロダクトを検索してもあまりヒットしませんし、デジタルツインコンソーシアムを取り上げた際、2024年現在でもIoT/デジタルツインのワードが精力的に今日でも使われているため、”スマートコネクテッドプロダクト”は浸透していないかもしれないかもしれませんね…