サマリ
想定読者:初学者の方+α / 想定時間:20分~25分程度
第6回目のテーマは、タイトルページにも記載があるIoTについて触れます。
#1 明確な定義がない?
IoTとはInternet of Thingsの略ですが、いきなり、「定義ないの?」と驚かれるかもしれません。様々調査してもこれだ!という定義は存在しなかったため、概念としての言葉だと私は認識しています。例えば、理工系の学生などが見るであろう本にも、
IoTとは、あらゆるモノをインターネットに接続して人間に様々なサービスを提供する概念、仕組みのことである。
引用:コンピュータ概論ー情報システム入門 第9版 共立出版株式会社
ということが書いてあり、”概念”、”仕組み”という言葉が出ていますね。また、amazonにもIoTの紹介ページがあるのですが、
IoT とは、従来インターネットに接続されていなかった様々なモノ(センサー機器、駆動装置(アクチュエーター)、住宅・建物、車、家電製品、電子機器など)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みです。
引用:amazon サイト ” IoTとは?”(https://aws.amazon.com/jp/iot/what-is-the-internet-of-things/)
ということが書いてあり、最初の本より詳しく書かれている感じですね。なお、言葉自体は、Kevin Ashtonという方が最初に使用したとの認識が通例です。
“Internet of Things”というフレーズは、1999年にP&G(の経営幹部)に向けてプレゼンテーションしたタイトルから生まれただろう。(中略)おそらく、私が”Internet of Things”という言葉を最初に使った人だからと言って、他の人がこの言葉をどのように使うかコントールする権利はない。
引用:That “Internet of Things” Thing Kevin Ashton RFID JOURNAL (https://www.itrco.jp/libraries/RFIDjournal-That%20Internet%20of%20Things%20Thing.pdf)より著者の意訳
この方は、RFID (※昔のユニクロの商品に、渦巻みたいなシール貼ってあったのを覚えていますでしょうか。あれが目に見える利用例です) という非接触のセンサ端末の推進者の一人なのですが、この文言から推察するにIoTという言葉自体は、”現実世界の情報をネット上でやり取りする未来”に向けた構想程度の意味しかなかったのではないかと思います。それが各所で引用され、意味が追加されていき、現在の壮大な言葉として形づくったのではないかとも。
その例として、「IoTで激変する日本型製造業ビジネスモデル」という本が非常に面白かったのですが、著者が以下のような記載をしています。
(前略:ドイツでの「インダストリー4.0」とアメリカでの「インダストリアル・インターネット」発足に触れた後、) このように従来のIT業界のキーワードとは異なり、組織的な活動が先行して生まれたのがIoTである。
引用:「IoTで激変する日本型製造業ビジネスモデル」、大野 治、日刊工業新聞社、より
この方は「インダストリー4.0」と「インダストリアル・インターネット」の潮流を受けてIoTの中身が定義されていったように記載しています。
ここからも、IoTは概念ではあるものの、ある程度実態を持った実現手段・機器の総称みたいな風に解釈することができますね。
#2 ”エッジデバイス”として末端に位置する機器を持つ
IoTを、”大小様々なモノがネットワークを通じてクラウドサービスなどと情報連携すること”程度に掴んできましたが、具体的にはどのように実現されているのでしょうか。
実は、上記の定義だと広くとらえれば携帯もIoTに関わる端末の一種だと言えます。よくファミリーレストランや居酒屋などでも、タッチパネルの端末で注文や会計をされると思いますが、これもIoT端末の一種だと言えます。これらは全てインターネットと現実世界の媒介を担当しているためです。これらを総称して、”エッジデバイス”と呼ばれることがあります。エッジとは”edge”で、”端”を意味する単語ですので、”端の機器”という意味になりますね。
そもそもIT業界の分野として、ITやICT、IoTなど様々な名称が存在するなかで、IoTの特徴はこのエッジデバイスを持つ仕組みの総称であると捉えてもらえれば遜色ないと思っています。例として、以下の図を用意しました。
IoT端末/IoT/ITなどの対象範囲と構成図(あくまでイメージです)
イメージとして、IoT端末(エッジデバイス)は飲食店のキャッサーで、そこで顧客が支払いを実施するとします。その際、裏の仕組みとしては、画面に映っているアプリケーションを経由して、ネット上にある会計ソフトにアクセスし、支払い情報を連携しています。また、会計ソフトは支払い情報を元に銀行やクレジットカード会社と情報を連携して処理を実施します。
実際の開発時には、会計ソフトと銀行間の連携を開発することはあまりないため(基本的に銀行が提供されている仕様に則る)、新しく最新式の?キャッサーを導入する際には”IoT”として会計ソフトとキャッサーの仕組みを開発し、IoT端末としてキャッサー自体をお店におきます。これらがIoTが定義する範囲になります。一方で、モノを開発しない情報通信系の開発の場合には、IoTとは言わずITやICTと定義されると思います。
#3 幅広い業界で活躍している
IoTは幅広い業界で活躍しています。IoTデバイスとしての推移と予測を、情報通信白書が公表しています。
出典:図表0-2-2-29 世界のIoTデバイス数の推移及び予測、令和3年 情報通信白書、第1部 2章 IoTデバイスの急速な普及より
出典:図表0-2-2-30 分野・産業別の世界のIoTデバイス数及び成長率予測、令和3年 情報通信白書、第1部 2章 IoTデバイスの急速な普及より
こちらの2つの図を見ても、IoTデバイス市場は旺盛であることがわかりますね。2つめの図は各産業ごとに分類されている中で、産業用途とコンシューマ向けは市場規模も成長率も特に大きいことがわかります(注:IoTデバイス数の多さ≒市場規模も大きいとして記載していますが、厳密ではありません)。事例としては、”産業用途”は工場のラインにおける監視の自動化、”コンシューマ向け”だとAlexa(※Amazonのスマートスピーカー)もそうですし、携帯も含まれていますね。
また違う言葉が出てきますが、IoTデバイス(IoT端末)を活用した”産業用途”の特に工場向けの改革は、「スマートファクトリー」とよく言われています。詳細はまた別の機会に触れられればと思います。
筆者余談)
上図にある情報通信白書より引用したIoTデバイス推移の図ですが、令和4年以降に記載が無くなっています。これは、IoTがバズワードであったため近年のAI事情を優先されたためか、はたまた、ICT市場として産業ベースで捉えるべきと認識されたのか、真相は不明ですがIoTに携わる者としては少し寂しいものを感じた次第です。