#9 デジタルツインコンソーシアムとは

サマリ

想定読者:業界・バズワードに興味がある方 / 想定時間:20分~25分程度
 第9回目のテーマは、第8回の続きとしてデジタルツインコンソーシアムについて触れます。


#1 OMGの一プログラムとして設立

 2020年5月にOMG (Object Management Group)の一プログラムとして設立されました。記事によると、Ansys、Dell Technologies、Lendlease、Microsoftなど有力な企業が発起人となって組織化されています。https://omg.or.jp/news/digital-twin-consortium-%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/ など参照)
 ※そもそも、OMGとは、1989年に発足したコンピューターアプリケーションのアーキテクチャー​テクノロジーに 関する標準化を推進する世界的な非営利団体で、UMLなどモデリングに関する標準を定めたりしています
(参考記事:https://www.jisa.or.jp/it_info/engineering/tabid/1063/Default.aspx

 また、デジタルツインの可能性として、以下が述べられています

Digital twin technology enables companies to head off problems before they occur, prevent downtime, improve the customer experience, develop new opportunities, drive innovation and performance and plan for the future using simulations.

 これは、「デジタル・ツイン・テクノロジーは、企業がシミュレーションを利用して、問題を事前に回避し、ダウンタイムを防止し、顧客体験を向上させ、新たな機会を開発し、イノベーションと業績を促進し、将来の計画を立てることを可能にします(筆者訳)」となります。この記載の中で興味深い点は、”ダウンタイムの防止”というデジタルツインらしい具体的な文言の記載がある点ですね。
 また、サイトを確認するに現参加メンバとしては、Dassault systems、GE、NECなど有力な企業が連なっており、IICの活動結果も踏まえると踏み込んだユースケースのノウハウが蓄積されていると想定されます。一方で、China Telecom、China Mobileなど中国系企業も鋭意参加しており、アメリカと中国が安全保障上で牽制している中での推進状況は興味深いところです。

(”digital twin consortium”, “Our Members”より引用, https://www.digitaltwinconsortium.org/dtcmembersearch/

#2 産業軸でワーキンググループを整備

 前回の記事で、IICがデジタルツインコンソーシアムに吸収されたのは、徐々に上位概念へシフトしているからかもしれないと記載しましたが、IICもデジタルツインコンソーシアムも、元々同じ母体(OMG)ですので、そのユースケースの類似性からも合併した形と解釈しています
 ここからも、このデジタルツインコンソーシアムでの活動は、例えば、“Aerospace & Defense、Agriculture”, “Food & Beverage”など産業別にワーキンググループを整備されていることも理解できます。ただ、一部、“Fintech”や”Security & Trustworthiness”など技術に近いワードで組織化されているのは、ここまで大きな潮流(バズワード)だからだと推察できますね。

出典:Digital Twin Consortium- Brouchureより引用(https://www.digitaltwinconsortium.org/pdf/DTC-Brochure.pdf

#3 デジタルツインならではの新たな仕様とは?

 それではこのコンソーシアムではどのような定義をしているのでしょうか。通常、会員にならないと閲覧できませんが、運よくYoutubeに”Digital Twin Platform Stack Architectural Framework”と題して紹介動画がありましたので、こちらから特に重要な2枚を拝借します(https://www.youtube.com/watch?v=ZDAVCD11JDo

(a) Building a reference architecture

(b) Digital twin system maturity

(どちらも、Digital twin consortium, “Digital Twin Platform Stack Architectural Framework”, より引用 https://www.youtube.com/watch?v=ZDAVCD11JDo)


 まずは(a)のアーキテクチャについてですが、下層から、”Security, trust, & Governance”、”IT/OT Platform”、”Virtual Representation”、”Integration Service Interfaces”、”Applications”の順に構成されていることがわかります。説明を聞く限り、そもそもの前提としてSaaSを代表とするクラウドサービスが中心にあり、それに外部から接続されることを想定しているとのことでした
 ですので、①”Security, trust, & Governance”が最下層に位置しているのは必要不可欠な要素という、技術の観点からのつながりよりはベースのような概念で構築されている模様です。また、②”IT/OT Platform”の上位に”Service Interfaces”がありますが、このレイヤで初めて現実世界との情報のやり取りを担っている構造も理解できます。ここからも、動画内でもデジタルツイン特有の”Virtual Representation”という層が重要であることを説明していました。(※余談ですが、このレイヤに”Modelling Language”といういかにもOMGらしい定義がされているようには思えますね)

 ただし、自身が腑に落ちていない点としてはサービス提供のイメージになります。例えば、AWSでのIoT導入のようなリアルタイムデータを自律型(一体型)のサービスで提供することよりは、どこかサービスがあっても後からデジタルツインの概念をアドオンさせることが出来る概念に捉えてしまいます。デジタルツインは、IoTなどによる分散型制御をしつつ、シミュレーションと現実世界との兼ね合いを意識することもあり、かなり技術的に難しいコンセプトだと思っていますので、既存システムに後追いで追加できそうと捉えられてしまうアーキテクチャは正しいのか?と考えこんでしまいます。(前者のようにハードウェアのレイヤから徐々にリアルタイム連携(同期をとる)ようなアーキテクチャではなくて大丈夫なのでしょうか…)
 もし、ここが規格などで明瞭に定義されるならば、一意ではありませんが、OSI参照モデル上で解釈するならば、プレゼンテーション層~アプリケーション層のレイヤで、デジタルツイン向けの技術部分が補強されているイメージと捉えれば、デジタル技術の構成としてはつながりますので、この記載時点ではそのようにまず解釈したいと思っていますし、どのように実現されていくかは注力していきたいと考えています。(※ただし、現状でも更なる理解が必要)

 説明動画の中で、成熟度モデル (b)にも触れていましたので参考で示しています。ここでも注意しているのは、モデリングとシミュレーション自体は古くから使われている概念であり、あくまで下層に位置しています。そこから、LABやENVIROMENTといった実環境の情報とリンクして初めて”Digital twin”と定義しています。さらに、全環境のリンクや双方向の情報のやり取りまで実現して初めて”Digital twin system”と定義している模様です。(このLv7~Lv9領域の実環境を見てみたいですね。)